| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-183  (Poster presentation)

マングローブ樹木におけるCO2、CH4フラックスの潮汐周期による影響【O】
Effect of tidal cycle on CO2, CH4 flux in mangrove trees【O】

*Masako DANNOURA(Kyoto Univ.), Daniel EPRON(Kyoto Univ.), Minori TOKITO(Kyoto Univ.), Sumonta PAUL(Kyoto Univ.), Rifat HREDOY(Kyoto Univ.), Renpei SUWA(JIRCAS)

マングローブ林は炭素蓄積の多い熱帯林のひとつであり、気候変動により生育域の変化が予測されている。したがってCO2やCH4などの温室効果ガスの動態を理解することは重要である。CO2は植物の呼吸によって生成され、水に溶けて蒸散とともに上方に運ばれる。マングローブの根では海水の塩分を除去して吸水するため、活発な呼吸が起こる。そのため、潮汐変動は樹木と大気とのCO2交換に影響を与える可能性がある。CH4は堆積物中の嫌気性条件下で生成され、水に溶けにくい。しかし、特に水ポテンシャルが低い日中には根や幹の空隙を通ることができ、幹を通して大気へと放出される。CH4は高い温暖化係数を持つためブルーカーボンとして固定される炭素の一部を相殺する可能性がある。したがって、マングローブ生態系の炭素収支においては、CO2とCH4の両方のフラックスを考慮する必要がある。本研究の目的は、マングローブ林におけるガス交換プロセスをより正確に理解するために、潮汐と日周サイクルがマングローブ樹木のCO2/CH4フラックスにどのような影響を与えるかを生理学的・物理学的に明らかにすることである。
石垣島宮良川流域に生育するオヒルギとヤエヤマヒルギを対象に、幹の3つの高さ(約0.2m、1.0m、1.5m)および根にチャンバーを設置し、CH4/CO2トレースガスアナライザー(LI7810,Li-cor)を用いて、2024年6月、8月、11月に、昼と夜、干潮と満潮時のCO2とCH4のフラックスを測定した。
幹からのCO2放出量に高さによる違いは見られなかった。一方、CH4放出量は下部で最も多かった。干潮時に測定された根のCH4放出量は幹の放出量よりはるかに多かった。幹のCO2/CH4放出量は、日中より夜間の方が低く、満潮時と干潮時の差はなかった。同じ測定箇所においてもCH4放出量は時間によって大きな変動があった。このような時間変動をより正確に理解するためには、継続的な測定が必要である。また、CH4放出量の多い根の空間分布を明らかにすることも今後の課題である。


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