| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-184 (Poster presentation)
主に農地土壌を対象に,表層に炭素を毎年0.4%ずつ貯留させ,人為的なCO2放出を抑制する「4‰イニシアチブ」が,国際的に推進されている.日本では,農地は国土の1割余りで,一方森林は6割以上を占めている.森林自体は炭素の吸収源として期待されてきたが,今日では管理放棄などアンダーユースにより林分の老齢化が進み,炭素吸収能の低下が懸念される.「4‰イニシアチブ」が注目するバイオチャーは,有機物資源由来の炭であり,長年にわたり分解されにくく,その炭素貯留能が期待される.農地への施用研究では,作物収量を増加させる例が多いが,中には影響が小さいか収量を減少させる場合も知られている.このため,森林への施用に先立ち,バイオチャーによる森林樹木への影響を評価し,その是非を検討する必要がある.本研究は,都市近郊の里山周辺の林分を代表する3樹種(コナラ,スギ,アカマツ)について,バイオチャーによるCO2吸収能への影響を明らかにすることを目的とした.実験的に大型ポットに各実生1本を植え,樹木と土壌からなるミニ森林生態系を構築し,成長やフラックス特性を評価した(2023年3月〜2024年11月).コナラとスギについては各樹種が生育する林分から採取した土壌とリター,アカマツについては市販の真砂土と採取したアカマツリターを用いた.春期に1年生の各実生を定植し,バイオチャー無しの対照ポット(N区)と散布ポット(B区)を用意した.成育管理として,適宜灌水を行い,被食昆虫を取り除くなどした.実生の成長を毎月記録し,2023年の夏期から秋期にかけて,フラックス(生態系純生産NEP,生態系呼吸Re)を測定した.N区とB区の間で,NEPはB区の方が高い傾向が認められたが,Reはアカマツと夏期のコナラを除き大きな違いは見られなかった.各樹種のCO2吸収に対して,バイオチャーが正の効果を持つことが示唆された.