| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-185  (Poster presentation)

モンゴルにおける砂丘が近接する草原の土壌水分環境に与える影響【O】
The Influence of Sand Dunes on the Soil Water Environment of Surrounding Grasslands in Mongolia【O】

*宮坂加理(日本大学), 宮坂隆文(名古屋大学), 袖山月渚(日本大学)
*Katori MIYASAKA(Nihon Univ.), Takafumi MIYASAKA(Nagoya Univ.), RUNA SODEYAMA(Nihon Univ.)

寒冷乾燥地モンゴル国の首都ウランバートルから南西に100km離れたフスタイ国立公園において、砂丘地と隣接しているステップ草原の植生量が、砂丘と離れたステップ草原と比較して植生量の多いことが観測されていた。予備調査として土壌断面を確認したところ、砂丘付近の草原の断面層は、上層が粘質土、下層が砂丘砂であった。大雨の直後の土壌水分分布をみると、上層と下層の境界では水分量が高くなっており、土層の境界が水の浸透を阻害するキャピラリー・バリアが発生したと考えられた。そこで、本研究では、同じ場所を対象とし、砂丘と草原の位置関係と植生量を調査し、砂丘の存在によりキャピラリー・バリアが発生し、その結果植生量に影響を与えているのか詳細に調べた。データは2023年8月に行われた現地調査のものを用いた。砂丘とステップ草原の境界面を0mとし、砂丘から0m、3.6m、7.5mにおいて1m×1mの格子内を植生種毎に上部刈取を行う植生調査を3反復ずつ行った。刈取後は植物を乾燥させ、乾燥重量の測定を行った。植生種は図鑑を参考にし、乾燥した場所に生育する種、湿地に生育する種、両方に生育する種の3種類に分類した。また、砂丘から0m、1.8m、3.6m、5.4m、7.5mにて土壌サンプリングを1~2反復行い含水比分布の測定を行った。植生調査の結果、砂丘と草原の境界から離れるにつれて、植生量は減少していた。湿地に生育する植生は0mでは見られた一方で、3.6m、7.5mではほとんど見られず、乾燥した場所に生育する植生が増加していた。土壌調査の結果では、0mは表層に粘質土が少しかぶっているものの、全層砂質土であり、3.6mでは深度0-40cm程度が粘質土、40-90cm程度が砂質土、90cm以深は再度粘質土であった。7.5mでは、130cmより上部が粘質土、下部が砂質土であった。含水比分布も土層の境界周辺で水分量が高くなっていた。以上から、砂丘の存在によりキャピラリー・バリアが発生していること、また砂丘に近いほど植生量が増加することを明らかにした。


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