| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-192 (Poster presentation)
1年間に産む卵の数は生物種の繁殖戦略を強く反映していることが報告されている。卵の数や繁殖戦略は他の生活史形質とトレードオフの関係にあることが議論されており、卵の数に影響する遺伝的な要因の特定は生活史戦略の進化の理解に役立つ。鳥類においても、緯度や標高などの環境要因の影響により同種間の別個体群や異なる種間において卵の数に違いがあることが報告されている。鳥類では1回の産卵で産む卵の数をクラッチサイズと定義されている。クラッチサイズを決定する遺伝的な要因について、鶏の系統間における産卵形質に寄与する候補遺伝子がGWAS解析によって同定された(Wang et al., 2023)。しかし、鳥類全体において産卵数を決める遺伝的な要因について知られていることは少ない。そこで、本研究では産卵数の決定に関わる遺伝子の検出を目指して、鳥類のゲノムの比較進化解析を行った。NCBIでゲノムデータを入手でき、かつ、Life Amniote History Databaseにおいて「クラッチサイズ」と、クラッチサイズを時間で補正するための「1年あたりの繁殖回数」が利用可能な62種の鳥類を本研究で使用した。ゲノムデータについて、OrthoFinderを用いて解析対象鳥類全種が共通して1コピーずつ持っている相同な遺伝子 (シングルコピーオーソログ) の同定を行った。得られた各シングルコピーオーソロググループから遺伝子系統樹を推定し、シングルコピーオーソログのアミノ酸配列の変異速度により、遺伝子系統樹における相対進化速度を計算した。この相対進化速度と「1年あたりのクラッチサイズ」において有意な相関関係を持つ遺伝子を調べた。以上の解析より得られた結果から、解析対象の鳥類全体で共通して産卵数に関係する遺伝的な基盤について議論する。