| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-205 (Poster presentation)
ミュラー型擬態では、複数の種が警告シグナルを共有して捕食者の忌避学習を促し、捕食リスクを減らすと想定されるが、実際には警告シグナルに多様性が見られ、議論の的となっている。ミドリババヤスデ種複合体(ミドリババ)とアマビコヤスデ(アマビコ)は、本州中部で灰色のミュラー型擬態環を形成している。ミドリババでは擬態環を伴う警告色多様化が見られ,祖先状態復元から東海・関西の一地域(3色エリア)で灰色集団からオレンジもしくは灰色とオレンジの中間色の集団が生じたと推定される。本研究では、ミドリババの灰色警告色の維持に、アマビコ(灰色)との(1)同所的分布と(2)同所的なアバンダンス(個体数)がどう関わっているかを、3色エリアとそれに隣接するミドリババでは灰色集団のみが分布する灰単色エリア間での比較により検討した。ここで、(1)ミドリババ灰色集団のうち、アマビコと同所的に分布する集団の率が高いほど、分布からのミドリババ灰色の維持効果は高いと考えられる。よって、3色エリアでこのミドリババ灰色とアマビコとの同所的分布率は低いと予測される。また、(2)擬態環の同所的な構成種間での擬態環参加のベネフィットは、アバンダンスの小さい種がより大きいと考えられるため、3色エリアでミドリババ灰色のアバンダンスはアマビコより少ないと予測される。結果として、(1)ミドリババ灰色とアマビコの同所的分布率は、3色エリアで32%(6/19集団)、灰単色エリアで42%(31/117集団)と大差はなかった。(2)アバンダンス予備解析では、3色エリアでの4つのミドリババ灰色とアマビコの同所サイトの全てで、ミドリババ灰色の方がアマビコよりアバンダンスは大きく、灰単色エリアでは、4つの同所サイト中の1つでミドリババ灰色の方が大きかった。ただし、アバンダンスは全体に集団間でのばらつきが大きく、解釈には注意を要する。