| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-217  (Poster presentation)

生物個体数の加速度を用いて間接効果を測る - 非線形時系列解析による手法の検討【O】
Measuring indirect effects by using the acceleration of population abundance - Evaluation of a method applying the Empirical Dynamic Modelling【O】

*橋本洸哉(弘前大・農生), 伊藤公一(同志社大・理工), 池川雄亮(琉球産経(株))
*Koya HASHIMOTO(Hirosaki Univ.), Koichi ITO(Doshisha Univ.), Yusuke IKEGAWA(Ryukyu Sankei Co. Ltd.)

生物群集では、捕食-被食関係のような2種間の直接的な相互作用のほか、資源競争のような第3の種を介した間接的な相互作用が複雑にからみあっている。そのため、多数の種で構成される野外群集において、ある特定の種間の直接相互作用と間接相互作用の影響を分離して評価することは困難な課題である。この課題に対して著者らは、個体群密度の増加(減少)速度の変化率すなわち加速度に着目し、古典的な個体群動態モデルの解析から、種Xの密度の加速度に対する種Yの密度の偏微分が、Xに対するYの直接効果と間接効果の和で表現可能なことを見出した。著者らはこれを「相互作用-加速度仮説」と名付け、この仮説に基づいて実データから直接効果と間接効果を分離して定量する新たな手法を開発することを目的として研究を行った。開発には、個体群動態モデルによるシミュレーションデータと局所重み付き線形回帰による時系列解析を用いた。シミュレーションで得られた生物密度時系列データから密度の加速度を近似的に計算し、局所重み付き線形回帰によって加速度に対する各種の寄与を偏微分の形で推定することで、「相互作用-加速度仮説」における直接効果と間接効果がそれぞれ定量可能なことが確かめられた。さらに、密度の加速度に対する偏微分の形で推定された直接効果と間接効果について、偏微分を積分して「加速度にもどす」ことで、生態学的な意味の解釈を進めており、本発表ではその成果も合わせて報告する。


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