| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-224 (Poster presentation)
世界的な農作物として重要な位置を占めるサトイモやコンニャクを含むオモダカ目サトイモ科には108の属に3,600を越える種が含まれている。サトイモ科のほとんどは肉穂花序と仏炎苞をもつことが共通するが、その花は両性花から単性花を経て雌雄異株と系統ごとに変化しており、また巨大なショクダイオオコンニャクから極小のウキクサまでを含むなど非常に多様な分類群である。サトイモ科の基部に位置して国内で生育するザゼンソウ属は2倍体のヒメザゼンソウ、4倍体のザゼンソウとナベクラザゼンソウの3種が分布している。我々はロングリードシーケンサーを用いてザゼンソウのゲノム配列を解読し、さらに核内の染色体立体構造を元に近傍に位置する領域を特定するOmni-Cを用いることで染色体レベルのゲノム配列を決定した。続いて両親種に由来するサブゲノムを復元するために、ヒメザゼンソウと比較して類似する2倍体染色体に分類した。親種由来と考えられる染色体配列を精査したところ、サブゲノム内にもさらに過去の倍数性に由来すると考えられる類似した配列が含まれていることを発見した。この古倍数性が生じた時期を確認するために染色体レベルでゲノムが明らかとなっているサトイモ科のサトイモ、カラー、ウキクサと比較したところ3種とも過去の倍数性の痕跡が確認でき、共通祖先で生じた倍数化がサトイモ科の多様性に寄与している可能性が示唆された。本発表では染色体レベルのゲノムから解明されるサトイモ科植物の染色体構造の起源と多様化プロセスにおける進化ダイナミクスについて議論したい。