| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-229  (Poster presentation)

色覚モデルを用いたリュウキュウコノハズクの羽色の隠蔽機能の解明【A】【O】
Elucidating the camouflage function of plumage coloration in Ryukyu Scops Owls using a visual model【A】【O】

*榛沢日菜子, 武居風香, 髙木昌興(北海道大学)
*Hinako HANZAWA, Fuka TAKEI, Masaoki TAKAGI(Hokkaido Univ.)

鳥類の羽色の隠蔽性に関する研究は、定量的な解析が難しく研究例が少ない。地味な羽色を持つ夜行性のフクロウ類については、多くの場合捕食者側と定義され採餌行動と獲物からの見えやすさという視点で羽色の研究が行われてきた。しかし、夜行性のフクロウ類は、日中休息している間に他の鳥類からモビングという追い払い行動を受けるため、これらの鳥類からの隠蔽も重要であると考えられる。モビングは、繁殖期にフクロウ類にとって巣の防衛や雛の給餌に割くエネルギーを低下させる。さらに、小型のフクロウほどモビングにより受ける負の影響が強いことが示されている。
本研究では沖縄島に生息する小型のフクロウ類であるリュウキュウコノハズクOtus elegansを対象とし、営巣環境となわばり内の非営巣環境においてモビングを行う鳥類の色覚からの隠蔽性が異なるかを色覚モデルを用いて検証した。その結果、本種のメスの羽色は鳥類の色覚に対しても営巣環境において非営巣環境よりも樹の幹との色の類似度が高いことがわかった。本種は日中、樹の幹や樹洞において休息を行う。そのため、羽色と樹の幹の色との類似度が高いことは、隠蔽性を高めることにつながると考えられる。さらに、本種のメスは巣内で抱卵や抱雛を担っている。また、メスによる巣内での抱雛は、育雛期初期まで続きその後は巣の外で見張りを行う。メスはオスよりも体サイズが大きいため、巣の防衛の役割を持つと考えられている。このようなことから、モビングを行う鳥類の色覚から見たときにオスよりも特にメスについて営巣環境での隠蔽性が高いことは繁殖において重要であると考えられる。本研究は色覚モデルを用いてフクロウ類において背景マッチングという観点からのマイクロハビタットの選択が、営巣において重要であることを示した初めての研究である。


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