| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-010 (Poster presentation)
シコクシラベ(Abies veitchii var. shikokiana)は四国の石鎚山、笹ヶ峰および剣山のわずか3山の頂上周辺にのみ遺存的に生育するシラビソの固有変種であるが、気候変動などによる集団サイズの減少が危惧されており、生息域内外での保存が重要視されている。これまで当該樹種3集団の遺伝的変異を明らかにし(岩泉ら 2016;森林遺伝育種 5: 172-179)、結実個体(母樹)を対象とした次世代(種子プール)の遺伝的多様性の解析や採種戦略の検討を行ってきたが(岩泉ら 2021;日林誌 103: 78-85)、現地内での天然更新や種子の収集に重要な、球果生産量の個体間差やその年次推移については知見が十分でない。また結実量と大きく関わりうる花粉の生産量や、個体サイズならびに成長率との関係性についても同時に評価することが重要である。
本研究では、石鎚山のシコクシラベ集団内で様々なサイズ級から108個体を選定し、2011年~2024年の14年間の長期にわたり球果着生量(個数)を連年調査すると同時に、2016年~2020年の5年間では雄花着生量(5段階で指数評価)を、また2012年、2017年、2022年と5年おきに個体サイズ(樹高、胸高直径)を調査し、結実量の個体間差や、それらと雄性繁殖量や成長量等の関係性について解析した。
個体あたりの平均球果着生数は2011年(52.0個)、2014年(55.0個)、2017年(24.4個)、2018年(19.0個)、2021年(15.0個)、2023年(82.1個)で多く、それ以外の年では球果の着生は少なかった(平均0.0~6.8個)。個体の球果着生数と個体サイズ(胸高直径)との間には大半の年で有意な相関関係が見られなかった一方で、雄花着生指数は、いずれの年においても個体サイズとの有意な正の相関が認められた。また、小サイズ(胸高直径)個体ほど10年間(2012~2022年)の成長率が高い傾向が見られ、さらに大半の結実年では、成長率の高い個体ほど有意に球果着生数が多い傾向が認められた。