| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-013  (Poster presentation)

コヨウラクツツジの標高勾配による繁殖特性の変異【A】【O】
The variation in reproductive characteristics of Rhododendron pentandrum along altitude gradients.【A】【O】

*竹内志奈, 細川宙暉, 中川弥智子(名古屋大学生命農)
*Yukina TAKEUCHI, Hiroki HOSOKAWA, Michiko NAKAGAWA(Nagoya Univ.)

標高勾配に沿った植物の研究はその種の環境適応や応答の解明に繋がるため、気候変動に対する植物への影響を予測して保全することに役立つ。ツツジ属の多くの種では、広い分布範囲を持つことが稀であるものの、コヨウラクツツジ(Rhododendron pentandrum)は冷温帯~亜寒帯の森林に幅広く分布しており、標高勾配に沿った調査をするのに適している。そこで本研究では、御嶽山の亜高山帯に生育するコヨウラクツツジの標高勾配による繁殖特性(開花時期、結果率など)の変異を明らかにすることを目的とした。
御嶽山の異なる標高3地点(以下:低標高、中標高、高標高)において、地点ごとの気温を計測した。また、各調査地において30~50個体を選定し、個体ごとに樹高、地際直径、開空度を測定した。2024年5~6月に個体ごとの開花数を、8~9月に成熟果実を数え、結果率を算出した。
各地点の開花~結実期の平均気温は低標高で14.1℃、中標高で13.4℃、高標高で11.9℃であった。コヨウラクツツジの開花期間は、個体間や個体内のシュート間によるばらつきが大きく、低標高では5月5日~6月10日まで、中標高では5月5日~6月25日まで開花が見られ、低標高の開花ピークが早かった。一方、気温が低かった高標高の開花期間は5月17日~6月10日と短く、全体的に開花数が少なく、開花ピークも見られなかった。GLMを用いて平均開花数に影響を与える要因について解析した結果、個体の地際直径が大きく気温が高いほど、平均開花数が大きくなることが示された。一方で、結果率は低標高で19.9%、中標高で28.7%、高標高で21.2%となり、標高による有意差は認められなかった。以上より、標高によって開花期間、開花数、開花ピークに差があるものの、比較的長い開花期間を持つことで、気温などの環境変化に対して繁殖成功に影響が出にくいのかもしれない。


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