| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-019 (Poster presentation)
北海道から沖縄まで日本国内に広く分布するアオウキクサは、低緯度帯を中心として世界中に分布するLemna aequinoctialis Welw.と国際的には考えられている。一方で、別府ら(1985)により、日本のアオウキクサは2種1亜種、すなわち九州以南に多産する常緑越冬型をL. aequinoctialis (ナンゴクアオウキクサ、以降ナンゴク)、日本に広く分布する種子越冬型をL. aoukikusa (アオウキクサ、以降アオ)、北陸地方にのみ分布し沈水越冬を行う系統群を亜種L. aoukikusa subsp. Hokurikuensis(ホクリクアオウキクサ、以降ホクリク)への分割が提案されており、日本の図鑑の多くがこれに従っている。アオは染色体数(2n)が約70であり、ナンゴク・ホクリクはともに40と報告されている。アオ・ホクリクは自家受粉により結実するが、ナンゴクは結実しない。アオは種子で、ホクリクは種子と休眠芽で、ナンゴクは常緑で越冬する点が大きく異なる。標本は残されているが、生体は失われている。発表者は全国からアオウキクサを採取し維持している。その中で、アオ・ホクリク・ナンゴクに対応するとみられるウキクサを見出した。推定ゲノムサイズはアオで約800Mbp、ホクリクで約450Mbp、ナンゴクで800Mbp程度と、ナンゴクについては過去の報告と矛盾した。一方で、形態的特徴や開花様式は過去の報告と一致している。葉緑体全ゲノム解析の結果、アオ内の変異は最大で5箇所とに少なく、アオとホクリクでは138箇所、アオとナンゴクでは1303箇所で変異が見られた。これらの推定ホクリク・ナンゴクとアオ内の変異について報告し、日本産アオウキクサの多様性について整理したい。また、アオウキクサが異質4倍体であることが明らかとなり、雑種起源の種としてL. aoukikusaが認められる機運がある。その場合の親種についても議論したい。