| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-022  (Poster presentation)

菌従属栄養植物ギンリョウソウの送粉者と繁殖様式【A】【O】
Pollinator and breeding system of mycoheterotrophic plant Monotropastrum humile (Ericaceae)【A】【O】

*楠実友, 三井裕樹(東京農業大学)
*Miyu KUSUNOKI, Yuki MITSUI(Tokyo Univ. of Agriculture)

ツツジ科ギンリョウソウ属のギンリョウソウは、モノトロポイド菌根を形成し、ブナ科、マツ科、カバノキ科などの外生菌根菌であるベニタケ科菌類から炭素資源を得ている菌従属栄養植物である。菌類に寄生することで、光合成に不可欠な光を必要としないため、暗い林床でも生存可能になった。しかし、暗い林床は昆虫の訪花頻度が少ない環境である。したがって、虫媒花であるギンリョウソウは結実率を高めるための送粉戦略をもつと予想される。本研究では、ギンリョウソウの送粉戦略を明らかにするために、①送粉者の訪花頻度と受粉様式、②花サイズ、開花日、個体密度が結実率に及ぼす効果を解析した。
 調査は2022~2024年に神奈川県厚木市中荻野に位置するあつぎこどもの森公園内の、イヌシデ、イタヤカエデ、コナラが優占する落葉広葉樹二次林の林床で行った。送粉者の訪花頻度を明らかにするため、目視で8:30~12:00にギンリョウソウの群落を計8回観察した結果、コマルハナバチ(3回)とトラマルハナバチ(4回)が訪花した(合計:22時間)。捕獲した個体にはギンリョウソウの花粉が付着していたことから両種が送粉者であることがわかった。インターバルカメラによる撮影(写真:1分間に1回および動画:1分間に10秒)では、コマルハナバチが3回観察された(合計:24日間)。これらの結果から、送粉者による訪花頻度が非常に低く、開花期間(花あたり約8日)に一度も訪花されない花もあると考えられる。そこで、受粉様式を明らかにするために人工受粉を行った結果、結実率は自家受粉(60%)、他家受粉(41%)、無処理(40%)であった。このことから、送粉者の訪花頻度が低いため、自家受粉により一回の訪花で結実する確率を上げていると考えられる。また、結実を高める生態的要因を推定するために、応答変数を結実の有無、説明変数を花サイズ、開花日、個体密度とし、一般化線形モデル(GLM)を用いた解析の結果を報告する。


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