| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-024 (Poster presentation)
植物の果実には、種子とその保護や散布に関わる構造(以降、付属体とよぶ)が含まれる。植物は種子の生存や散布を高めるため、種子と付属体の生産に目的に応じた資源分配をしていると考えられる。これまで、同一機能の付属体を持つ植物間では、種子と付属体への資源分配に関する比較研究が行われてきた。しかし、付属体の機能を超えた植物全般について種子・付属体資源分配を調べ、付属体の機能との関係を理解しようと試みた例は無い。そこで、木本植物を対象に種子と付属体への資源分配を調査し、付属体の機能と種子・付属体資源分配の間にある一般的傾向の解明を試みた。
木本植物31種の果実を採取して種子と付属体に分別し、乾燥重量、窒素量を測定した。灰分量および燃焼熱を測定し、構成コストを算出した。
果実1個に含まれる種子の乾燥重量には種によって600倍を超える差があり、乾燥重量の付属体/種子比は0.08から8まで大きくばらついた。調査した種の種子と付属体への資源分配を主成分分析で解析した結果、第1主成分は各資源の付属体/種子比および種子窒素量と関係が強く、高タンパク種子の防御や散布のため付属体に十分資源を投資するという、植物の資源分配戦略を反映していると考えられた。第2主成分には、付属体の窒素量や灰分量と種子の小ささの影響が強かった。第2主成分のスコアは翼果で他の付属体タイプと比べて大きく、軽量な種子をタンパクとミネラルの多い付属体で散布するという、翼果の資源分配戦略を反映していると考えられた。
以上から、木本植物の種子と付属体への資源投資について、「高タンパク種子に高い付属体投資」、「翼果では軽量種子にタンパクとミネラルの多い付属体」という2つの傾向があることが明らかとなった。発表では、この2つの傾向がもつ生態学的な意義について議論したい。