| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-032  (Poster presentation)

フェンスへの巻き付きは自生するつる植物の適応度に影響するか?【A】【O】
Does the fitness of wild vine plants increase via wrapping on a fence?【A】【O】

*白井利空, 中田和義, 勝原光希(岡山大学)
*Riku SHIRAI, Kazuyoshi NAKATA, Koki KATSUHARA(Okayama Univ.)

都市環境下では様々な人工の局所的環境(道路脇,側溝,等)が創出されやすく,これらが植物の代替的・新規的な生育地として機能しうることが指摘されている。特に,人工構造物の影響を強く受けることが考えられる生育型として,つる植物が挙げられる。つる植物はホストに巻き付いて生育することで,ホストを地上部の支持や成長に利用している。一方で,ホスト植物が枯れることによる落下や損傷等のリスクや,環境中に不均一に存在するホスト植物を探索するコストも存在する。都市環境下で普遍的に存在する人工のフェンスは,つる植物にとっては好適な生育環境として機能しうることが考えられる。そこで本研究では,フェンスへの巻き付きがつる植物の成長や繁殖に与える影響を明らかにすることを目的に調査を行った。
対象種は,都市域に広く分布するつる性在来多年草コヒルガオ及びつる性外来一年草マルバアメリカアサガオを選定した。調査は岡山大学津島キャンパス内で行い,自生する各種のシュートを,フェンスに巻き付いているシュート,他の植物に巻き付いているシュート,自立しているシュートの3つの生育タイプに分け,成長量や,植食性昆虫による葉の食害量,送粉者昆虫の訪花頻度,果実生産等について観察・記録を行った。成長量の調査では,各シュートの植生高,葉数等を測定した。調査の結果,フェンスへの巻き付きが両種の成長に正の影響を与えることが示唆され,特に植生高への正の効果が大きいことが示された。フェンスへの巻き付きは,コヒルガオでは葉数を大きく増加させたが,マルバアメリカアサガオでは葉数への影響は小さく,種によって成長に与える影響に違いがあることも示唆された。また,訪花頻度や,果実生産に関しては生育タイプ間で明瞭な差はみられなかった。


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