| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-034 (Poster presentation)
調査地である鉱山跡地では、高濃度の重金属を含有する殿物を集積しており、ススキが優占種として自生している。現地調査の結果から、ススキは重金属と高温の複合ストレス環境下で調査地に定着したと考えられる。ススキの根には、新種の内生菌Aquapteridospora sp.が高頻度に生息しており、これまでの研究により、Aquapteridospora sp.が重金属・高温ストレス下でススキ実生の生長を促進し、ストレス耐性を増強すると考えられた。Aquapteridospora sp.が産生するindole-3-acetic acid(IAA)様化合物についてSalkowski試薬を用いた比色定量を行った結果、通常条件(20℃)と比較し、高温条件(30℃)での産生量の増加が確認された。このことから、高温条件でのAquapteridospora sp.によるIAA様化合物の産生量増加がススキ実生の生長促進に寄与したと考えられた。また、Aquapteridospora sp.の培養液をメタボローム解析に供した結果、IAAに関連する複数のトリプトファン代謝産物において高温条件での増加が確認された。そこで、本研究ではAquapteridospora sp.が産生するIAAを含めたトリプトファン代謝産物について高速液体クロマトグラフィーなどを用いた分析を行い、通常条件と比較することで高温条件における質的・量的変動について報告する。加えて、重金属吸着や抗酸化作用が報告されているメラニンについても高温条件での量的変動について報告する。これらの結果から、高温条件におけるAquapteridospora sp.の代謝産物の変化がススキ実生の生長やストレス耐性に与える影響について考察する。