| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-036 (Poster presentation)
河川生態系において、0.45 µm 以上 1 mm 以下の有機物は微細有機物(Fine Particulate Organic Matter: FPOM)に分類され、淡水生態系の炭素・窒素循環において重要な役割を果たす。その分解は、微生物や水生昆虫を含む水生生物によって影響を受ける。微生物は細胞外酵素を分泌し、水生昆虫は物理的破砕や選択的消化を通じてFPOMの化学組成を変化させる。しかし、水生昆虫と微生物がFPOMの分解をどの程度促進し、それに伴い溶存有機物(DOM)の質にどのような影響を与えるのかは未解明である。本研究では、水生昆虫および微生物群集がFPOMおよびDOMの分解・変質に与える影響を評価するため、室内培養試験を実施した。
実験には、ハンノキの葉、付着藻類、エグリトビケラ Cincticostella elongatula の糞由来のFPOM を用い、5つの処理区を設定した:①無生物対照(生物的影響を除いたFPOM)、②水生昆虫処理(物理的破砕や消化の影響を評価)、③付着微生物処理(タイル上で培養した付着微生物群の影響を評価)、④遊離微生物処理(バイオフィルムから分離した遊離微生物の影響を評価)、⑤5 µm以下の微生物処理(遊離微生物のうち5 µm以下のもののみを分画し、その影響を評価)。 FPOMの炭素・窒素安定同位体比(δ¹³C、δ¹⁵N)およびC/N比 を測定し、DOMの三次元蛍光分析によりHIXおよびBIXを算出 した。また、MiSeqプラットフォームを用いた16S rRNAおよび18S rRNAアンプリコンシーケンスにより、処理間の微生物群集の組成および分類学的差異を解析した。
その結果、河川生物は摂食や定着を通じてFPOMおよびDOMの質的変化に影響を与えることが示唆された。本発表では、詳細な結果について報告する。