| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-037  (Poster presentation)

ケイソウへのツボカビ感染症がP:N比の差異によって受ける影響【O】
Effects of different P:N ratios on chytrid infection on diatom.【O】

*中村萌生, 三木健(龍谷大学)
*Housei NAKAMURA, Takeshi MIKI(Ryukoku Univ.)

富栄養化は、宿主の植物プランクトン密度や宿主の栄養状態を変化させ、ツボカビなどをはじめとした寄生者にも影響を与える。
しかし、リン制限によって感染集中度(感染の分布がランダム、集中、一様かを定量化するための値)がどのように変化するのかについて、ケイソウUlnaria sp.、ツボカビは影響が調べられていない。
本研究ではケイソウを宿主、ツボカビを寄生者として使用し、リン量の多寡がケイソウに対するツボカビ感染症の流行、感染集中度や感染率についてどのような影響をもたらすのかを検証することを目的とする。リン量が植物プランクトンの増減に関わるツボカビ感染症の流行に対してどのように関わっているかを明らかにすることで、自然界でリンの増減によって富栄養化、貧栄養化した際、植物プランクトンの増減を予測することに寄与することができる。
リンを抜いたWC培地とケイソウ、ツボカビをマイクロプレートの各ウェルに添加し、リン量を各WC培地ごとに調整することで異なるP/N比のWC培地を作成した。調整したWC培地を14日間培養し、ケイソウの数・ツボカビの寄生数を、二日おきに計7回カウントした。
ツボカビの寄生数、ケイソウの被寄生数のデータ・1つのケイソウに複数のツボカビが寄生した多重寄生のデータから、感染率、感染種集中度に対してのP/N比の影響を見るためにRを使用して線形回帰分析、Welchのt検定を行った。
得られたケイソウの個体数・ツボカビの寄生数のデータからP:N比が高いほど感染率が高くなる傾向がみられたが、線形回帰分析、Welchのt検定をした結果、有意な差はみられなかった。
課題として、観察の際に小さなツボカビを見逃してしまい、ツボカビが多いウェルほど感染率を過小評価してしまうことがある。
改善策として、蛍光試料を使用し観察の精度を改善させ、感染率とP:N比の関連性を明らかにする予定である。


日本生態学会