| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-039 (Poster presentation)
植物プランクトンを宿主とする、真菌であるツボカビは、宿主に大量死をもたらす可能性
や、植物プランクトンのサイズ分布や遷移の変化、ブルームの遅延や抑制などを引き起こす病原性を持つ寄生性の生物であるということが知られている。しかし、ツボカビと植物プランクトン間の相互作用や、ツボカビの感染が蔓延する環境条件などわかっていないことが多い。先行研究では、植物プランクトンのサイズが大きいとツボカビの胞子嚢も大きくなり、遊走子の数も増加するといった関係は明らかになっているが、植物プランクトンの個体サイズとツボカビ感染率などのパラメータの関係についてはわかっていない。そこで、本研究では、植物プランクトンの体長の大小がツボカビの胞子嚢や遊走子の数に影響するのであれば、感染率などのパラメータに対しても、大小などの影響があるのではないかという仮説を立て、植物プランクトンの体長の大小によってツボカビの感染率、感染回数、Intensity(感染強度)の 3 つのパラメーがどのように変化するのかを調べた。琵琶湖南部で採水した湖水中(6 月、8 月、9 月各 2 日ずつ)に存在する植物プランクトン及びツボカビを対象とし、蛍光顕微鏡での種同定、imageJ による画像解析を行った。また、R を用いて線形回帰、一般線形モデルによる解析も行った。サンプルごとに線形回帰分析を行った結果、感染率、感染回数、Intensity(感染強度)のすべてのデータで有意差がみられなかったため、植物プランクトンの体長の大小は感染率などのパラメータには影響しないのではないかということが示唆された。また、すべてのサンプルをまとめて一般線形モデルで解析したところ、Navicula nipponicaとAulacoseira ambigua、Pediastrum biwae、Staurastrum dorsidentiferum では、有意にサイズからの予想がずれるという結果となり、ほかの要因が関係しているかもしれないことが示唆された。