| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-040  (Poster presentation)

植生間での外生菌根菌群集組成とその時空間動態の比較【O】
Comparison of the spatiotemporal dynamics of ectomycorrhizal fungal community structure among different vegetations【O】

*杉山賢子, 松岡俊将(京大フィールド研)
*Yoriko SUGIYAMA, Shunsuke MATSUOKA(FSERC, Kyoto Univ.)

外生菌根菌の群集組成は、樹種や施業履歴の違いを反映し植生タイプにより異なる。しかし従来の研究は、植生タイプ間での群集組成の違いに着目することが多く、同一植生タイプ内での群集の時空間的な変動を記述し、植生タイプ間で比較した例は限られる。
本研究では、植生タイプ間での外生菌根菌群集組成の時空間動態の比較を目的に、京都大学北海道研究林標茶区において、3つの植生タイプ(カラマツ(Larix kaempferi)人工林、トドマツ(Abies sachalinensis)人工林、ミズナラ(Quercus crispula)の優占する広葉樹天然林。以下、植生)から計10林分を選出し、外生菌根菌群集の継続的な調査を行った。調査は2023年8・11月および2024年6・8・11月に行った。各林分に16×16mのプロットを設置し、プロット内で樹木根を含む土壌コア(100ml, 5cm深)を25個ずつ採取、土壌コア中の菌根根端に対し菌類rDNAのITS1領域の配列解読を行い、得られた配列を97%の相同性閾値で操作的分類群(OTU))分けすることで、外生菌根菌OTU組成を記述した。
10プロット×5回の調査で合計389 OTU(1プロット×1回あたり46.7 ± 11.7 OTU、平均±標準偏差)の外生菌根菌が得られた。植生間で比較すると、OTU組成は植生により有意に異なり、OTU数及びOTU組成のばらつきは天然林で有意に高かかった。同一植生内の解析では、いずれの植生でもOTU数・OTU組成がプロット間で有意に変化した(カラマツ林のOTU数を除く)。また、時空間変動の20~40%がプロットの違いで説明された。一方、同一プロットでも調査日間で出現するOTUは一部異なったものの、OTU数・OTU組成の時間変動を有意に説明する変数はなかった。これは、場所によってOTU組成が異なり、組成は時間的に比較的安定している事を示している。ここから、同じ植生タイプでも過去の定着履歴を反映して場所ごとに異なる群集組成が成立していること、植生タイプによらず定着履歴は影響するが、その強さは植生タイプにより異なることが示唆された。


日本生態学会