| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042  (Poster presentation)

ヤクザルの菌食行動について、可否食の基準の解明【A】【O】
Mycophagy among Japanese macaques in Yakushima Island, how do they judge edible or non-edible mushrooms【A】【O】

*大沼明日佳(金沢大学)
*Asuka OHNUMA(Kanazawa Univ)

 屋久島に生息するニホンザルMacaca fuscata yakuiは頻繁に多種のキノコを食すことが報告されている。屋久島では菌類相の多様性が高く、中には致死毒を持つ種も存在する。多種のキノコを食す屋久島のニホンザルにとって毒キノコを識別することは重要であると考えられる。サルはキノコと遭遇した際に、キノコの種類によっては直ちに食べずに、注意深く弄る、匂いを嗅ぐ、少しだけ囓る、などの検査行動をとり、サルが食べなかったキノコは有毒種率が有意に高いことが報告されている(Sawada et al,2014)。サルは有毒種を識別していると考えられるが、どのようなキノコの特徴を識別しているのかは明らかにされていない。
 サルがどのようにキノコの可食性を判断しているのか明らかにすることを目的に、屋久島の西部海岸地域に発生しているキノコの種同定と外部形態の記録を行い、外部形態とサルの反応の関係を解析した。サルの反応を応答変数、キノコの外部形態(傘表面の色、軸長、軸径、傘径、発生場所、湿重量、乾重量、発生総重量)を説明変数とした尤度比によるロジスティック回帰分析の結果、サルは傘表面が白色、地上生、軸が長い、重量があるキノコを忌避する傾向が示された。しかし、外部形態のみではサルの反応の全てを説明することはできなかった。観察されているサルの検査行動に匂いを嗅ぐという動作がある。そこでキノコが発する匂い(揮発性化学物質)の捕集と分析を行った。GC/MSによる分析の結果、採取した全てのキノコから2-Pentanone, 4-hydroxy-4-methylなど炭素、水素、酸素からなる化合物が検出された。また一部のキノコ種からは特徴的な匂い成分である硫黄、塩素、窒素を含む化合物も検出された。これらキノコの匂いを構成する揮発性化学物質の組成とキノコの毒成分の有無およびサルの行動へ与える影響を考察する。


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