| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-043 (Poster presentation)
河川水中の微生物群集は、一部は土壌や大気からの加入が考えられる。これまで、河川水中と土壌の微生物相の比較から河川への加入源として土壌の貢献が指摘されてきたが、大気中の微生物相との比較は限られる。さらに、河川水中の微生物は粒子に付着している微生物(Particle-Associated: PA)と水中を浮遊する微生物(Free-Living: FL)で群集組成が異なるが、PAとFLそれぞれの供給源の違いを検討した例は少ない。本研究では、河川水中の微生物群集をPAとFLに区別し、土壌と大気中の微生物群集と比較することで、河川微生物の供給源を評価する。
京都府の冷温帯林(京都大学芦生研究林)において8つの一次谷で2023年7月、9月、12月に調査を行った。流域の出口で河川水を1L採水し、3.0μm (PA)と0.22μm (FL)のフィルターで微生物を捕集した。採水した河川流路上の高さ1.4m地点にポンプを設置し、4.5 L/分で24時間大気を吸引してフィルターに大気中の微生物を捕集した。土壌はポンプを設置した地点で、川岸から0.5m、1.0mの地点でそれぞれ3点ずつ鉱質土壌層(0~5cm)を採取し、混合し1サンプルとした。DNAメタバーコーディング解析により各サンプルの細菌と真菌のASV組成を決定し、河川水(PAとFL)-土壌-大気間で比較した。
真菌と細菌ともに、ASV組成の類似度はPAとFLは大気よりも土壌で高く、特にPAで顕著だった。大気中のASVは、細菌はPAとFLとの共有が少なく、大気中のみで検出されたものが多かったのに対し、真菌はPAとの共有が多かった。本調査から河川水中の細菌群集は、PAとFLともに大気よりも土壌からの供給が多いと考えられるが、真菌のPAは大気からも供給されている可能性があり、生物群や存在形態により、供給源の重要性が異なる可能性が示された。