| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-044  (Poster presentation)

ビデオロガーを用いたアオウミガメ食性解析と腸内細菌の成長段階・地域間比較【A】【O】
Diet analysis using video loggers and comparison of gut microbiome in regard to growth stages and habitats in green turtles (Chelonia mydas)【A】【O】

*Shogo V KANNO(UTokyo, AORI), Katsufumi SATO(UTokyo, AORI), Kazunari USHIDA(Chubu Univ.), Sayaka TSUCHIDA(Chubu Univ.), Kentaro Q SAKAMOTO(UTokyo, AORI)

アオウミガメは,孵化幼体から亜成体までは,他のウミガメ種と同様,外洋を回遊しながらクラゲやサルパなどを捕食して成長するが,沿岸域に定住すると,主食を海藻・海草といった植物食にシフトさせる.さらに,定住後のアオウミガメは個体ごとに特定種類の海藻を選択的に捕食するということがわかってきている.藻類は様々な多糖類を含んでいる.しかし,アオウミガメ自身はこれらを消化する酵素を持たないので,藻類の分解には消化管内の共生細菌が担っていると考えられる.このことから,沿岸に定住し始め,食性が変わり始める段階のアオウミガメは,腸内細菌の構成がダイナミックに変わっていると考えられるが,食性の異なる2地点間で検証した例は見られない.
 本研究では,クラゲや種々の海藻を食べる成長段階のアオウミガメが夏季のみ来遊する岩手県大槌町(n=3)と,沿岸域で特定の海藻種を食べ始める成長段階のアオウミガメが定住する沖縄県竹富町黒島(n=4)で野外調査を実施した.バイオロギング手法により,ビデオロガー(DVL400L,LittleLeonaldo社)を装着し,採餌シーンを撮影することで,個体ごとの餌生物を調べた.同時に,腸内細菌の分離・培養・同定を行い,餌としていた生物種と腸内細菌の種構成を比較した.
 腸内細菌の16S rRNA遺伝子の部分配列を用いたシーケンスによる簡易同定の結果,両調査地でBacteroides 属,Clostridium 属細菌といった偏性嫌気性菌が分離された.また,ビデオデータの解析の結果,餌としていた生物種が異なる両調査地の個体からClostridium butyricum をはじめ,共通して分離された細菌種も確認された.これらの細菌種については,食性が草食へと変化する以前から消化管内に定着し,海藻由来の糖類を利用している可能性が考えられる.


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