| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-063  (Poster presentation)

北海道南西部松前町の岩礁帯におけるカメノテの生活史【A】【O】
Growth of gooseneck barnacle Capitulum mitella in southwestern part of Hokkaido【A】【O】

*Takehiro KADO, Satoshi WADA(Hokkaido Univ.)

 カメノテCapitulum mitellaは北海道南西部以南に分布する有柄目のフジツボである。一般に生物の生活史は緯度と共に変化することが知られるが、カメノテの北限である北海道の個体群を対象とした研究はない。そこで本研究は、北海道南西部渡島半島岩礁帯のカメノテの生活史を解明することを目的として成長速度、生存率および繁殖期を調査した。
 北海道南西部渡島半島南端に位置する白神岬の潮間帯(41°24'06.3"N 140°11'02.0"E)で、2024年6月から2025年2月までの干潮時に野外調査を毎月実施した。2024年6月に、10地点のコドラート内のカメノテを全て個体識別して追跡調査を実施した。個体識別した個体の体長を毎月測定し、各月の生存率を算出した。さらに、コドラート外のカメノテを毎月10個体採集して、卵巣の発達と抱卵の有無を目視で確認した。
 カメノテの成長は体長に依存し、体長が小さいほど成長速度が速かった。また、成長量は夏期に大きく2024年9月以降減少した。調査期間内に、死亡率が明確に高くなる時期は見られなかった。卵巣の発達は2024年7月から9月と、2024年12月から2025年2月に観察されたが、抱卵は2024年7月から8月にのみ観察された。佐渡、房総半島、相模湾での先行研究では卵巣の発達は6月から8月にのみ観察されている。本結果はカメノテの卵巣が1年に複数回発達することを示す初めての報告である。ただし、2024年12月から2025年2月は、抱卵を観察できなかった。そのためカメノテがこの期間に交尾を行なっているかは不明である。


日本生態学会