| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-073 (Poster presentation)
急激な地球温暖化は魚類の個体群に大きな影響を与えている。これまでの温暖化の影響に関する研究では、影響を受けた地域と受けていない地域を直接比較することが困難であったため、他の要因による影響と温暖化の影響を切り離すことは困難だった。この問題を解決するために、原子力発電所の近隣地域など人為的で急速な温暖化にさらされた魚類群集を調査することが有効である。本研究では、原子力発電所の稼働により局所的な温暖化が起こっている日本の沿岸の魚類個体群に焦点を当て、その変化を近隣の対照地域と比較した。具体的には、局所温暖化による個体数と体長の変化を調べ、これらの反応に影響を与えた魚類の形質を推定した。その結果、18%の種で個体数の著しい変化が、40%の種で体長の著しい変化が確認された。一般化線形回帰モデルを用いて、これらの変化と関連がある形質を調べたところ、回遊性、栄養段階、分布緯度、平均体長が影響を与えることが示唆された。特に回遊種や熱帯種は、温暖化条件下で個体数と体長がともに増加した。これらの結果は、温暖化により回遊性および熱帯性の種が越冬し、安定した個体群を確立することが可能になったことを示唆している。日本の沿岸における地球温暖化による魚類群集の変化をよりよく理解するためには、本研究で示されたように、幅広い種の魚類をモニタリングすることが非常に有効である。さらに、魚類の形質に注目することで、温暖化の影響に対して特に脆弱な種を特定することができる。