| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-075  (Poster presentation)

緑川河口干潟におけるアサリの個体群変動要因の解明【A】【O】
Evaluation of factors affecting variation in population size of the Manila clam at Midorikawa tidal flat (Kumamoto Pref.)【A】【O】

*青柳陽花(熊本大学), 本田陸斗(熊本県立大学), 小森田智大(熊本県立大学), 逸見泰久(熊本大学), 山田勝雅(熊本大学)
*Haruka AOYAGI(Kumamoto Univ.), Rikuto HONDA(Kumamoto Pref. Univ.), Tomohiro KOMORITA(Kumamoto Pref. Univ.), Yasuhisa HENMI(Kumamoto Univ.), Katsumasa YAMADA(Kumamoto Univ.)

沿岸浅場域の干潟でしばしば優占するアサリ(Ruditapes philippinarum)は漁獲対象生物であり,その個体群サイズ (漁獲量)の増減を推定することを目的に,個体群動態の把握を目指した研究が行われてきた.アサリの個体群サイズが減少する要因として環境変動,被食,乱獲,競争などが個別の研究事例として挙げられるが,これらの要因は独立しておらず,相互に関連して影響を及ぼしていると考えられる.そこで本研究では,アサリの個体群サイズに影響を与える,「食害(エイ)」,「漁獲」,「自然死」の3つのパラメーターについて,各要因の相互関係を考慮しつつ,アサリの減少に対する各要因の寄与率を定量的に評価した.
緑川河口干潟の3地点で2023年5月~12月にかけ,コドラート法による定量採集により現存量と体長組成の変化を把握した.また,あみ袋を用いて捕食・漁獲の影響を排除した個体群を作成した.捕食圧は捕食者であるエイの食痕面積から推定し,自然死は飼育実験により評価した.その結果,5月の個体群は9月までに自然死で74%,漁獲で77%,被食で44%減少し,エイによる被食よりも漁獲の影響が最も大きいことが示唆された.また,3要因の累積から,5月の個体群サイズは9月に3%まで減少することが推定された.しかし,本研究の推定値は実測値とは異なっていた.観測したアサリ個体群サイズと本研究の推定値の差異は,近隣からの移入によって説明されると考えられる.移入率は5月から10月にかけて-1.7~134.5%と劇的に変化することが推定された.外部からの移入による補填も,アサリの個体群サイズ維持にとって重要なプロセスであることが示唆された.


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