| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-078 (Poster presentation)
構造色を持つ昆虫類の中には種内で色彩変異を示す種が存在し、甲虫においてはオサムシ類やコガネムシ類、ハムシ類に顕著な色彩変異が見られる。この中でも特にオオセンチコガネなどでは地理的な色彩変異に関する研究が複数行われているが、構造色の種内変異に関して明確な適応的意義が見いだされることは稀である。本研究では構造色の種間および種内変異の実態を明らかにするため、湿地に生息するハムシ科のネクイハムシ類について、その色彩変異を調査した。調査は北海道内の遠別町、積丹町、江別市、釧路市、上ノ国町、足寄町の6か所にあるスゲ類が繁茂する湿地環境で行い、総採集個体はスゲハムシ、シラハタネクイハムシ、エゾオオネクイハムシ、ヒラシマネクイハムシ、ホソネクイハムシ、アシボソネクイハムシの全6種328個体であった。採集した成虫個体の鞘翅の色彩を測定し、種間および採集地ごとの違いを比較した。結果として、6種のうちでスゲハムシとシラハタネクイハムシについては他の種と有意に異なる体色を持っており、種内での変異幅も大きいという結果が得られた。それぞれの種内変異について、スゲハムシとシラハタネクイハムシの両種に関して地域間での色彩および変異幅に違いが見られた。これらの結果から、ネクイハムシ類の色彩の多様化機構を研究するにあたっては、もっとも多型性が高く個体数も多いスゲハムシが好適な材料となるものと考えられる。