| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-081  (Poster presentation)

佐渡島と本土間におけるクロサンショウウオの系統地理解析【A】【O】
Phylogeographic analysis of Hynobius nigrescens between Sado Island and the mainland.【A】【O】

*渡辺晃史(新潟大学), 田口裕哉(東北大学), 髙橋大樹(九州大学), 陶山佳久(東北大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Koushi WATANABE(Niigata Univ.), Hiroya TAGUCHI(Tohoku Univ.), Daiki TAKAHASHI(Kyushu Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

佐渡島は、本土との距離は近いが隔離期間が長く、固有種や固有亜種が報告されている生物学上貴重な島である。しかし、生物が島に進出した地史的時代および本土集団との遺伝的分化や、遺伝的特異性については調べられていない種が多い。このため、分子系統解析を用いてこれらの課題を明らかにすることは、佐渡島の生態系の成り立ちを推測するうえで重要である。本研究では佐渡島を含む北日本に広く分布するクロサンショウウオ(Hynobius nigrescens)を研究対象とし、ゲノムワイドSNPsを用いた遺伝解析を行うことにより、佐渡島への移入経路と移入年代を推定することを目的とした。材料として、先行研究で佐渡島と同じハプロタイプを示す個体群を中心にサンプリングを行い、MIG-seq法によりゲノムワイドSNPsを取得した。その結果、佐渡島のクロサンショウウオは本土集団と比べて低い遺伝的多様性を示し、佐渡島集団は創始者効果や遺伝的浮動の影響を受けていると推察された。デモグラフィー推定では、本土から佐渡集団が分岐するシナリオは支持されず、17万7000年(95%CI:2万年から83万5000年)前の後期更新世に、共通祖先から佐渡・新潟・福島地域集団が同時に分岐するシナリオが支持された。この結果は、広域に分布していた個体群が分断されることで佐渡島集団が成立したことを示している。クラスタリング解析の結果からは、小佐渡と上越海側でクラスターを共有している個体が確認されたが、デモグラフィー推定で交雑を加味したモデルを含めて解析を行わなかったため、発表では、交雑モデルを含めた解析結果についても報告する。また、佐渡への共通祖先の移入年代は不明のため、今後はクロサンショウウオの生息域全体を対象に移入履歴について解析を行う予定である。


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