| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-082  (Poster presentation)

機械学習による画像認識を用いたユキヒョウの自動検出手法の確立【A】【O】
Developing a machine learning-based image recognition method for automated snow leopard detection.【A】【O】

*蓮見優奈(東京農業大学), 木下こづえ(京都大学), Kubanychbek ZHUMADAI UULU(Snow Leopard Foundation), Koustubh SHARMA(Snow Leopard Trust), 菊地デイル万次郎(東京農業大学)
*Yuna HASUMI(Tokyo Univ. of Agri), Kozdue KINOSHITA(Kyoto Univ.), Kubanychbek ZHUMADAI UULU(Snow Leopard Foundation), Koustubh SHARMA(Snow Leopard Trust), Dale M. KIKUCHI(Tokyo Univ. of Agri)

ユキヒョウ(Panthera uncia)は、広範な山岳地域に低密度で生息するため、生息地の調査や個体数の推定にはカメラトラップが活用されてきた。しかし、カメラトラップから得られる膨大な画像や動画データを目視で分析するには多大な時間と労力を要するため、効率的なデータ処理手法が求められる。
本研究は、YOLO v7 (You Only Look Once)を用いた深層学習モデルを構築し、カメラトラップ画像からユキヒョウを自動検出するシステムを開発した。ユキヒョウが生息するキルギス共和国で取得したカメラトラップ画像をアノテーションし、学習用データセットとしてユキヒョウ17,090枚、他10種25,231枚を使用した。さらに、検証用データセットとしてユキヒョウ1,790枚、他種3,599枚を使用した。モデルの評価指標には適合率、再現率、および平均適合率(mAP)を用い、それらのバランスを考慮した条件を設定した。
 自動検出モデルを500 epoch 学習させた結果、学習データが最も多かったユキヒョウは適合率約94%、再現率約90%、mAP約96%であった。一方で、最も検出精度が低かったのは、学習データ106枚のリンクス(Lynx lynx)であり、適合率約21%、再現率約19%、mAP約21%であった。これは学習データの不足により、体格が類似するオオカミ(Canis Lupus)やキツネ(Vulpes vulpes)など他種との誤検出が生じたためと考えられる。また、クラス全体での適合率は約70%、再現率は約69%、mAPは約71%であった。本自動検出モデルで推論をした結果、5,329枚の画像データを約9分で処理できた。推論時のクラス全体の適合率は約85%、再現率は約70%、mAPは約74%であった。
 以上の結果から、学習データの拡充や昼夜の異なる光条件の画像を含めることにより、モデルの精度向上が可能だと考えられる。ユキヒョウ以外の動物の自動検出には課題が残ったが、本手法により、ユキヒョウの自動検出が可能となり、今後のモニタリング作業の効率化が期待される。


日本生態学会