| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-083 (Poster presentation)
ヤマヨツボシオオアリ(Camponotus yamaokai)は、ヤマアリ亜科オオアリ属ウメマツオオアリ亜属に属し、枯死枝や枯死したササの内部に営巣する、樹上営巣性のアリである。本種のコロニーは、複数の機能的な女王を含み、次世代の有翅女王は春に血縁のオスと産まれた巣内で交尾を行う。また、巣内のワーカーは遺伝的に近く、近親交配が行われていることが示唆されている。
本研究は、本種の交尾の選好性と、それによって生じ得る集団遺伝学的な特徴を明らかにすることを目的とした。本種の交尾の選好性は、同巣のペアと異生息地のペアでの交尾行動を比較することで検証した。集団遺伝学的な特徴は、採集した本種の遺伝解析を行うことで検証した。
交尾行動において、本種は異生息地の交尾ペアで、メスによる交尾を避けるような行動が記録された。遺伝解析の結果、本種は高い近交係数の値(F = 0.38)を示し、数 cm ~ 1 kmの空間スケールにおいて地理的距離と遺伝的距離の正の相関(r = 0.48)を示すことが明らかになった。以上から、本種は少なくとも一部は近親交配を行い、生息地における低い遺伝子流動を示すことが明らかになった。