| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-084  (Poster presentation)

佐賀平野における近年のカササギ営巣密度の変動とその要因【A】【O】
Changes in nesting density of Pica serica in the Saga Plain in recent decades and related factors【A】【O】

*土屋佳央(佐賀大学), 永渕拓歩(佐賀大学), 佛坂安恵(佐賀県神埼市), 池上真木彦(国立環境研究所), 徳田誠(佐賀大学, 鹿児島大学)
*Kao TSUCHIYA(Saga Univ.), Takuho NAGAFUCHI(Saga Univ.), Yasue BUSSAKA(Kanzaki City, Saga), Makihiko IKEGAMI(NIES), Makoto TOKUDA(Saga Univ., Kagoshima Univ.)

土地利用の変化はさまざまな生物に影響を与える。17世紀に朝鮮半島から導入され、数百年にわたり佐賀平野に定着しているカササギは、1980年代以降の都市化の進展に伴い営巣場所を樹木から電柱などの人工物へと変化させ、適応してきた。同地の本種個体群は、生物の土地利用に対する適応を考慮する上で興味深い研究対象である。しかしながら、1990年代以降、一貫して減少傾向が続いており、佐賀市では1989年から2019年にかけて営巣密度が1/5にまで減少している。そこで本研究では、佐賀平野におけるカササギの近年の密度減少の要因を明らかにすることを目的とし、営巣密度や巣立ち成功率を調査した。調査は佐賀県内7エリア96地点で行い、先行研究と同様に1㎞四方の調査区を設定した。2024年4月から6月にかけて、調査区内の巣を探し、位置情報、営巣の有無、営巣場所(樹木・人工物)、地上からの高さを記録した。さらに、営巣密度の変動要因を調査するため、土地利用と営巣密度の関係、および営巣密度と巣立ち成功率の関係を分析した。調査の結果、すべての調査地域で営巣密度は3巣/㎢以下であり、2019年の同様の調査と比較し、佐賀、筑後川、福富、鹿島で減少していた。土地利用と営巣密度の関係を解析したところ、2008年から2019年にかけての変化は調査区の農地率や建物率の増減と関係があったが、2019年から2024年の変化はこれらの増減のみでは説明できず、異なる要因が関与している可能性が示唆された。営巣密度と巣立ち成功率の関係を調査した結果、高密度地域は低密度地域よりも巣立ち成功率が有意に高かった。低密度地域では、カササギが複数羽で協力して天敵であるカラスを追い払うことが難しく、巣立ち成功率が低くなっている可能性がある。この結果は、営巣密度の変動が土地利用の変化、他種との関係などさまざまな影響を受けていることを示唆している。


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