| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-088 (Poster presentation)
都市域におけるドブネズミ(Rattus norvegicus)による衛生的・経済的な影響は,世界各地で大きな問題となっている.ドブネズミの管理には,生態学的知見に基づいた防除策の検討を含んだIntegrated Pest Managementの考え方が導入されているが,ドブネズミにとっての重要な食物資源であるゴミの集積方法とドブネズミの出現の関連については,未だ研究例が不足している.このことから本研究では,2024年の8,9月に関東地方のある飲食店密集地域において様々な方法によるゴミの集積場所でのドブネズミの出現数を記録して回り,ゴミの集積方法とドブネズミの出現の関連を評価した.8回にわたる調査では計127ヶ所のゴミ集積場所が確認され,計774回の記録の下で75匹のドブネズミが確認された.そして,偽の不在による過剰のゼロデータの考慮を目的としたゼロ過剰ポアソン混合モデルを構築したところ,プラスチック製のバケツ型ゴミ箱を用いた集積方法では,金網や金属板製の容積200 L以上のゴミ箱などを用いた方法よりも,ドブネズミの観測数が有意に少なかった.また,統計的に有意ではなかったものの,ゴミ袋を地面に直接置く集積方法は,本研究で確認された集積方法の中で最もドブネズミの観測数が多い傾向にあった.さらに,ゴミ袋やゴミ箱が破損していたり雨どいと近接していたりする場合に,ドブネズミの観測数が有意に多かった.これらの結果から,飲食店密集地域においてドブネズミの出現を減少させるためには,ゴミ袋を直接地面には置かないこと,可能であれば遮蔽性の高い小さなゴミ箱に入れること,ゴミ箱の破損がないように管理すること,雨どいなどの水を得やすい場所から遠ざけることが有効であると考えられた.