| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-102  (Poster presentation)

神奈川県葉山産ニホンベニクラゲの出現傾向と分子系統解析【O】
Occurrence patterns and molecular phylogenetic analysis of Turritopsis sp. collected from Hayama, Kanagawa【O】

*井村勇貴(明治大学大学院), 近藤正博(明治大学), 岩倉翔吾(明治大学大学院), 門田晃汰(明治大学), 久保田信(ベニクラゲ研究所), 向井有理(明治大学大学院, 明治大学)
*Yuki IMURA(Graduate school of Meiji Univ.), Masahiro KONDO(Meiji Univ.), Shogo IWAKURA(Graduate school of Meiji Univ.), Kota KADOTA(Meiji Univ.), Shin KUBOTA(Res. Inst. Turritopsis spp.), Yuri MUKAI(Graduate school of Meiji Univ., Meiji Univ.)

ニホンベニクラゲはヒドロ虫綱花クラゲ目に属するクラゲであり、神奈川県においては江の島周辺の水域で過去複数回に渡って確認されている。本研究では、神奈川県三浦郡葉山町の葉山港において2019–2024年にかけてニホンベニクラゲの調査を行い、メデューサの採集記録と分子系統解析を行った。
採集は、桟橋から海水中にプランクトンネットを投げ入れて引き回し、海水ごと回収する方法で行い、双眼実体顕微鏡と研究用倒立顕微鏡を用いて種同定と形態観察を行った。採集された個体は、成熟度に関わらず、4本の放射管が口柄の根元から傘縁まで傘の内側をなぞるように伸びており、口柄は黄色く、触手は傘縁に一列に並ぶ形で存在した。また、採集した海水100 mLあたりのニホンベニクラゲ個体数は、いずれも海水温が連日0.3–0.6 ℃ずつ上昇または下降している日に急増していることが判明した。
分子系統解析のために、一定数の採集個体を-80℃で凍結保存しておき、後日それらの中から無作為に選出した個体を対象に塩基配列解析を行った。比較対象として、先行研究にて2018年の葉山港及び2019年の白浜で採集された個体においても同様に行った。分子系統解析には、上記の塩基配列解析で得られた523 bpまたは524 bpの配列データと、公開データベースGenBankに登録されているミトコンドリア16S rRNA遺伝子の部分配列データを使用した。その結果、本研究の解析対象である葉山産と白浜産のニホンベニクラゲは全て、Turritopsis sp. 2 とTurritopsis sp. 4 及び Turritopsis sp. 5で組織されているクレードに含まれた。解析結果から判明した各クレードの分岐を踏まえ、ベニクラゲ類の生活環逆転の起こりやすさや形態的特徴、有性生殖様式(卵放出型・保育型)を含む遺伝的及び進化的な関係について考察した。


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