| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-103 (Poster presentation)
太陽光発電所の建設は、開発時の攪乱による生態系への影響が懸念される一方で、適切な管理を行うことで半自然生態系と両立できる可能性が指摘されている。しかし、多くの既往研究では播種等、造園的な種の導入が前提とされており、積極的な人為介入を行わない場合に成立する生態系についての知見は限られている。そこで本研究では、草刈りのみで植生維持されている太陽光発電所において、人為介入がない状態で成立する植生の特徴を明らかにすることを目的とした。
岐阜県郡上市のゴルフ場跡地に建設された美並メガソーラーにおいて、2024年夏季(7・8月)および秋季(10月)の2回植生調査を実施した。当該発電所は森に囲まれており、敷地はフェンスで囲われている。調査時点で運開後5年が経過しており、運開以降、除草剤は施用されず、年2回の草刈りが継続的に行われている。調査地をパネル下、パネル間、林縁、草地の4タイプに分類し、それぞれ12地点(パネル下は林縁から近い地点と遠い地点の計24地点)の計60地点に1m×1mのコドラートを設置し、出現した全植物種の種名と被度を記録した。その後、多様度指数、種組成(PERMANOVA, nMDS)を比較した。さらに機能的形質をnMDSプロット上に投影し、各タイプの種組成を特徴づける形質を検討した。
解析の結果、パネル下の多様度指数は草地や林縁と同程度であったが、種組成は草地とは有意に異なり、林縁に近くなった。さらにパネル下の植生は、シダ類やバラ科の日陰を好む種に特徴づけられていた。
このことから、日射量が制限されるパネル下のハビタットとしての質は林縁に近いと考えられた。周囲に森林が存在する割合の高い日本の太陽光発電所では、除草剤を使用せず草刈りを継続することで、播種等の介入を行わずとも地域の生物多様性の維持に貢献する半自然生態系が成立する可能性が示唆された。