| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-114 (Poster presentation)
二次草原は採草、放牧などの人為利用により、維持されてきた二次的な植生であり、生物多様性や生態系サービスに関連した高い価値を持つ。しかし、草原利用の低下などの原因により、二次草原の面積は減少している。二次草原の現状と課題を把握するため、2014年と2021年に全国規模で草原の維持管理に関するアンケート調査が実施された。2014年に行われたアンケートの結果では、草原の利用目的はかつての放牧・採草から観光、生物保全に転換してきている。草原の維持管理では、担い手不足・高齢化、ボランティア不足が課題となっており、担い手確保のための取り組みも進んでいないことが示唆された。しかし、これらの問題を左右する要因は十分に検証されていない。また、先行研究では、回答者の属性や気候などの地理的特徴が、草原の維持管理と草原の価値に対する認識に影響を与えると指摘されている。本研究では、(1)草原の維持管理を制限・促進する要因、(2)草原に求められる役割とその影響要因を解明することを目的とした。
本研究では、2021年のアンケート票に基づき、期待される草原の役割、管理者代表の年齢・性別などの独自の質問項目を五つ追加し、アンケート票を作成した。2014年・2021年に実施した草原管理自治体の情報にしたがい、追跡アンケート調査を2024年に行い、全国の二次草原の維持管理の規定要因を検証した。
結果、10年間で草原維持管理を取り巻く現状は大きく変わらず、担い手不足・高齢化の問題が依然として浮彫となった。草原の維持管理では、集落による草原の管理は限界がある一方、希少種保全の必要性に対する認識が維持管理を促進する可能性がある。また、草原のニーズは管理目的、気温条件、草原面積など多角的な要因に依存し、炭素保持への期待は気候変動による影響の緩和への期待に繋がり、地域の気候は水源涵養に対する需要を左右することが明らかになった。