| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-117  (Poster presentation)

小都市でのヒートアイランドに対する鳥類分布の季節変化【A】【O】
Seasonal Variations in Bird Distribution in Response to Urban Heat Islands in a Small Subarctic City【A】【O】

*神力仁樹, 赤坂卓美(帯広畜産大学)
*Masaki SHINRIKI, Takumi AKASAKA(Obihiro University)

野生動物によるヒートアイランドへの適応戦略の解明は,都市生態系における生物多様性の維持機構を理解する上で極めて重要な要素となる.しかし,これまで野生動物の空間利用とヒートアイランドの関係については,夏季や繁殖期である春季のみを対象にしており,他の季節については考慮されてこなかった.多くの脊椎動物は体温を一定に保つために,ヒートアイランドによって生じる高温環境に対して,生理学的および形態学的な適応を示すだけでなく,相対的に気温の低い環境を利用する可能性がある.一方で,特に厳寒期を有する亜寒帯においては,冬季のヒートアイランドは,脊椎動物にとって寒さを軽減させるため,相対的に気温の高い環境を利用する可能性がある.特に鳥類は移動能力が高く,生息地の分断化が著しい都市でも比較的自由に行動できるため,季節に応じてヒートアイランドへの反応を変化させている可能性がある.そこで本研究は野生動物の都市に対する適応戦略の理解に資する知見を提供することを目的に,鳥類はヒートアイランドに対して,夏季は負の反応を示し,冬季は正の反応を示すと仮説を立て,都市に生息する鳥類の分布と微気候の空間分布の季節変化を明らかにした.
亜寒帯に属する帯広市周辺の市街地からランダムに100グリッド(30m×30m)選定し,それぞれの季節において各グリッドに出現する鳥類の種数および個体数を記録した.得られた各グリッドの鳥類の種数および個体数と,地表面温度を主とする環境要因の関係を検討したところ,仮説に反し,鳥類と地表面温度との関係は,冬季のみで検出された.厳寒期を有する亜寒帯の都市においてヒートアイランドは,現段階では野生動物に正の効果をもたらす可能性があるかもしれない.


日本生態学会