| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-130  (Poster presentation)

多摩丘陵における在来種を保全した草原の管理履歴【A】【O】
Management history of grasslands conserving native species in the Tama Hills.【A】【O】

*紀正, 倉本宣(明治大学)
*Zheng JI, NOBORU KURAMOTO(MEIJI UNIVERSITY)

 温暖湿潤な日本の多くの地域では、植生遷移の速度が大きく、それに対抗するだけの人為を加えないと現状の植物群落を維持することができない。その人為を意図的に行うことが植生管理である。
 本研究では、管理水準の異なる、身近な明治大学生田キャンパス、明治大学黒川農場自然生態園、横浜自然観察の森の3箇所を対象として、植生管理の状況を記録した。
1. 明治大学生田キャンパス 管理計画が策定されておらず、管理履歴が保存されていない場所
2. 明治大学黒川農場自然生態園 植物社会学の手法にしたがって、管理計画が策定され、管理履歴が保存され、モニタリングが実行されて、順応的管理が行われている場所
3. 横浜自然観察の森 市民参加型の管理方法として、種に着目した管理計画が策定され、管理履歴が保存され、モニタリングが実行されて、順応的管理が行われている場所
 黒川農場自然生態園の方法は、植物社会学に基づいて群落区分を行って現存植生図を作成するものであり、専門的な知識が求められる。そのため、植生管理作業の指揮、作業の実施、調査のそれぞれを専門家が担当している。横浜自然観察の森では、野鳥の会のレンジャーと友の会のボランティアが協働して、植生管理を行っている。そのため、専門性の高い植物社会学的な手法ではなく、種に着目した手法を取っている。
 生田キャンパスは大学のキャンパスであって、その目的が生物多様性の保全や自然観察ではないものの、一部の斜面樹林にはヤマユリや林床植物が生育している。多くの施設は生田キャンパスと同様に位置づけは生物多様性の保全や自然観察ではないものの貴重な自然を有することが考えられる。このような現在は植生管理の必要性が認められておらず、適切な管理が行われていない場所における植生管理の展開手法について検討した。


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