| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-131  (Poster presentation)

環境DNAを用いた広島県内の河川におけるオオサンショウウオモニタリング法の検討【O】
Monitoring Methods for Andrias japonicus in Rivers in Hiroshima Prefecture Using Environmental DNA【O】

*髙田涼(近畿大学), 苅部甚一(近畿大学), 池田誠慈(広島大学総合博物館), 清水則雄(広島大学総合博物館)
*Ryo TAKATA(Kindai University), Zin'ichi KARUBE(Kindai University), Seiji IKEDA(Hiroshima University Museum), Norio SHIMIZU(Hiroshima University Museum)

日本固有種であり国の特別天然記念物でもあるオオサンショウウオ(Andrias japonicus)は,生息環境の悪化により絶滅が危惧されている.そのため,本種生息環境の保全と改善が早急に求められるが,それには本種の生態の解明と生息状況の把握が必要である.近年,本種の生息状況調査法として環境DNA分析法が注目されている.本種の環境DNA検出法はすでに発表されているが,実際の本種のモニタリングに活用するにはいくつかの検討すべき課題がある.その一つに,本種の環境DNAが検出された際に,実際の個体がどの程度上流に生息しているのかを推定することはできない課題が挙げられる.そこで本研究では,本種の環境DNA検出結果と実際の生息範囲の関係性について検討を行った.
本研究では,本種の生息が長年の生態調査で確実に確認されている広島県東広島市内の河川に設定した4地点(繁殖巣穴・巣穴近傍を含む)において2023年2月~2024年1月の間に月1回の採水を実施した.また,2024年5月にはこれらの4地点の間に細かく採水地点を設定し採水を行った.採水量は1 ℓとし,ガラス繊維フィルターでろ過を行いそのフィルターからDNA抽出をし,リアルタイムPCR分析を行った.
1年間の調査の結果,巣穴近傍の地点1では年間を通して陽性反応が得られた.繁殖巣穴近傍の地点2でも各月で陽性反応が見られたがDNAコピー数濃度は孵化が推測される時期に上昇するなどの変動が見られた.地点1の巣穴から約1 km下流にある本種個体の生息が確認されていない地点3も通年で陽性反応が見られ,採水地点付近に本種個体がいるか,上流から本種個体由来のDNA断片が流れている可能性が考えられた.また,本種個体の存在が確認された場所の下流側の地点4では,1年間の調査では通年で陽性反応が確認できたが2024年5月の調査では検出されず,本種個体が移動した可能性が示唆された.本発表では,これらの結果から実際の生息範囲との関係性と今後の展開について議論する.


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