| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-141 (Poster presentation)
小動物を対象とした個体識別法では,これまで,指切り法や標識法が用いられてきた。これらの識別法では,個体に負荷をかけるため,行動や生存に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。一方で,体表の色彩や模様などの個体差に着目した識別法は,識別部位の写真を個体情報とするため,個体に負荷を与えない点で有用である。しかしながら,この方法では調査を繰り返すと撮影した写真が多くなり,人の目による照合では時間と労力を要する。このことを踏まえて,個体識別の効率化のために,画像認識による写真の照合が様々な動物分類群で適用されている。
絶滅危惧IB類(環境省RL)のナゴヤダルマガエルは,体表に特徴的な斑紋をもつ。演者らの研究により,本種の斑紋は個体識別が可能な程度に個体差があり,成長してもその分布パターンには大きな変化が見られないことから,斑紋による個体識別の有効性が示唆されている。しかしながら,本種の斑紋の類似性について,画像認識を用いた定量的な評価は行われていない。そこで本研究では,ナゴヤダルマガエルの斑紋による個体識別法を確立することを目的に,特徴点(画像に写る特徴的な部分)の抽出を行うアルゴリズムであるAKAZEを使用し,個体識別プログラムを開発した。
ナゴヤダルマガエルの飼育個体を対象に,2023年6~10月および2024年4月に背面写真を撮影した。そして,2023年6月に撮影した写真を検証の基準となる参照画像,2023年7月以降に撮影した写真を参照画像と比較するための検証画像として,特徴点マッチングを実施した。その結果,各月において,同一個体の参照画像と検証画像で共通する特徴点が最も多く検出された。このことから,本研究で開発した個体識別プログラムでは,ナゴヤダルマガエルの斑紋による個体識別が可能であることが示唆され,今後,野外個体群への適用が期待される。