| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-144  (Poster presentation)

ロードサイドセンサスを利用したオオジシギの飛翔ポテンシャルマップ作成【O】
Developing a Flight Potential Map of Latham's Snipe using Roadside Census【O】

*北村亘, 茨田匡(東京都市大)
*Wataru KITAMURA, Masashi BARADA(Tokyo City Univ.)

風力発電施設の増加に伴い、風車への鳥類の衝突事故が問題となっており、特に猛禽類を中心に環境アセスメントによる適切な対応が求められている。一般的に、発電事業者は環境省が公開するセンシティビティマップ「EADAS」を用いて立地選定を行うが、EADASは10kmメッシュで希少鳥類の出現情報を評価しており、鳥類の衝突リスクを適切に評価するにはより小規模なスケールの情報が必要とされる。しかし、小規模なリスクマップを作成するには詳細な調査が必要であり、費用や時間の負担が大きいことが課題となっている。そこで本研究では、短期間かつ簡易な調査手法による十分な精度の衝突リスクマップの作成を目的とした。調査地は北海道根室市とし、対象種は風力発電建設に対して脆弱とされるオオジシギ(シギ科)とした。調査にはロードサイドセンサス法を用い、走行中の車内からオオジシギの鳴き声を記録し、出現地点を地図上にプロットした。得られた分布データを基に、単位面積当たりの個体数を目的変数とし、説明変数として植生、平均標高、平均傾斜角、建物までの距離、漁港までの距離、海岸までの距離を設定し、最大エントロピー法を用いたモデルを作成した。その結果、オオジシギの出現確率は、二次林などの植生から離れ、海岸や建物の近くに位置する場所で高くなることが明らかとなった。また、定点観察調査による飛翔頻度と推定された出現確率の相関を検証したところ、有意な正の相関が確認された。このことから、風力発電施設の環境アセスメントにおいて、ロードサイドセンサスが有効な調査手法であることが示唆された。さらに、オオジシギのようなディスプレイ飛行を行う種の分布調査にも有用であることが明らかとなった。


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