| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-145  (Poster presentation)

太陽光発電と風力発電の隣接地域における鳥類への複合影響の検出の試み【A】【O】
An Attempt to detect In-combined Effects on Birds at Areas adjacent to Solar and Wind Energy Generation【A】【O】

*茨田匡, 北村亘(東京都市大学)
*Masashi BARADA, Wataru KITAMURA(Tokyo City Univ.)

温室効果ガス削減の対策として、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進められている。しかし、新規発電所建設のための土地確保が課題となる中、複数の発電施設を統合した「統合型再生可能エネルギー発電施設」が普及し始めている。特に、風力発電と太陽光発電を組み合わせた施設の建設が増加しているが、これにより野生動物への影響が複合的に生じる可能性が指摘されている。例えば、太陽光発電施設ではパネルの反射光が双翅目などの昆虫を誘引し、小鳥類の種数や個体数が増加することが報告されている。この影響により、太陽光発電施設に隣接する風力発電施設ではバードストライクのリスクが高まる可能性がある。そこで本研究では、従来の風力発電施設と比較して、統合型風力発電施設における鳥類の飛翔頻度の変化を明らかにすることを目的とした。本研究では、①風力発電施設単体、②統合型風力発電施設、③発電施設がない比較サイトの3つの環境を対象にポイントセンサス調査を実施し、鳥類の飛翔頻度を比較した。解析では、飛翔頻度の高かったタカ目、チドリ目、スズメ目(カラス科を除く)の3分類群に着目し、発電施設の種類(風力、統合型、比較サイト)を説明変数として統計解析を行った。その結果、スズメ目は繁殖期において風力発電施設および統合型風力発電施設で飛翔頻度が高いことが明らかとなった。一方で、チドリ目は冬季に、タカ目は年間を通じて統合型風力発電施設で飛翔頻度が低下する傾向が見られた。これらの結果から、スズメ目は太陽光発電施設をソングポストとして利用している可能性が示唆され、繁殖環境や餌資源の分布が飛翔頻度に大きく影響を与えていることが示された。今後、統合型発電施設における鳥類の具体的な利用状況をさらに詳細に検討することで、より包括的な環境影響評価の確立が求められる。


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