| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-147 (Poster presentation)
コウライオヤニラミ(Coreoperca herzi、以下コウライ)は朝鮮半島原産の肉食性淡水魚であり、2017年に宮崎県大淀川水系上流部で侵入・定着が確認された。本種は現在、大淀川全域に蔓延しつつあり、食害による水域生態系への影響が強く懸念されている。しかし、原産国を含め本種の食性に関する詳細な知見はほとんど無く、侵入先でどのような生物を捕食しているのか、その実態把握が急務となっている。そこで、本研究では胃内容物メタバーコーディング解析により、捕食対象の種(分類群)やその組成、個体サイズによる捕食傾向を調べ、侵入河川における本種の捕食実態を解明することを目的とした。2024年9月に大淀川の支流である沖水川の下流にてコウライ50尾を捕獲し、実験室へ冷凍で輸送した。各個体の胃および腸管の内容物を取り出し、99.9%エタノールで固定した後、DNAを抽出した。魚類(MiFish)、昆虫類(MtInsects-16S)、甲殻類(MiDeca)のユニバーサルプライマ―を用いて各分類群のDNAを増幅し、NovaSeq X Plusによるシーケンスを行った。検出された配列を分類できる最も解像度の高い分類群レベルで同定し、検出の有無を調べた結果、90%の個体からいずれかの分類群が検出され、コウライが水生昆虫と小型魚類を中心に多様な生物を捕食していることが示された。さらに、コウライの個体サイズと胃内容物の種(分類群)組成には有意な関係はなく、小型個体であってもオイカワなどの遊泳能力のより高い魚類を捕食できることが示唆された。また、各魚種の検出頻度は、沖水川の同地点で8月に採水した水試料に含まれた環境DNAから推定された量的な小型魚類相と有意な正の関係を示した。このことから、コウライは捕食可能なサイズで、かつ生物量の多い魚を種の区別なく捕食している可能性が高いと考えられた。