| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-148  (Poster presentation)

有毒な国内外来種アズマヒキガエルがエゾサンショウウオの成長に与える負の影響【O】
Alien toxic toads suppress individual growth and phenotypic development of native predatory salamanders【O】

*井上嘉大(鎌倉女学院高等学校), 岡宮久規(ふじのくに環境史博), 岸田治(北海道大学)
*Yoshihiro INOUE(Kamakura Jogakuin  H.S.), Hisanori OKAMIYA(Shizuoka Nat. Hist. Mus.), Osamu KISHIDA(Hokkaido Univ.)

有毒な外来種の侵入が在来生態系に与える影響としては、在来種が外来種を捕食することによって生じる中毒死が注目されてきた。しかし、外来種を捕食したものの中毒死せず、生き残った在来種の生活史に与える影響について調べた研究はほとんどない。本研究では、本州から北海道に侵入した有毒な国内外来種であるアズマヒキガエルの幼生(以下、ヒキガエル幼生)が、在来種のエゾサンショウウオ幼生の成長と表現型可塑性(大顎化)に与える影響について、室内実験と野外実験を用いて調べた。室内実験では、エゾサンショウウオ幼生を単独飼育し、ヒキガエル幼生を一匹だけ与える実験区と与えない実験区を用意し、その後の餌は同じにし、成長を比較した。また、それぞれの実験区に餌となる小型のエゾサンショウウオ幼生が高密度でいる条件(共食い条件)といない条件(非共食い条件)を追加し、大顎化の発現の違いを比較した。野外実験では、自然池に網囲いを設置し、野外の密度を再現してエゾサンショウウオ幼生を飼育し、ふ化直後のヒキガエル幼生の在・不在を操作して室内実験と同様の結果が得られるのか調べた。また、ヒキガエル幼生を投入するタイミングを変えて、ヒキガエルの産卵タイミングがエゾサンショウウオ幼生に与える影響についても調べた。室内実験の結果から、エゾサンショウウオ幼生がヒキガエル幼生を一匹でも捕食すると、その後の成長や大顎化が抑制されることが示された。野外実験の結果から、ヒキガエル幼生の存在下ではエゾサンショウウオ幼生の平均体サイズが小さくなり、日数の経過とともに生存率も低下することが示された。また、体サイズが小さくなる傾向は、エゾサンショウウオ幼生が発生初期にヒキガエル幼生に出会った場合に、より影響が大きいことがわかった。これらの結果から野外においても、ヒキガエル幼生はエゾサンショウウオ幼生の生活史に負の影響を及ぼしている可能性が示された。


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