| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-149 (Poster presentation)
ブラウントラウトSalmo truttaは産業管理外来種に指定されている外来サケ科魚類であり,養殖施設からの逸出や放流による国内河川湖沼への定着が近年問題視されている.群馬県内でも発表者らにより2021年に吾妻川支流干俣川で定着が確認され,地域の漁業協同組合と共同して駆除が行われているものの,再生産の指標となる当歳魚を含むブラウントラウトが継続して採捕されることから,外部からの移動による侵入が疑われている.本研究は干俣川本支流のブラウントラウトの現時点における生息状況を明らかにし,ブラウントラウトの干俣川本支流間における移動分散ルートを推定することを目的とした.
ブラウントラウトが確認された地点とその近傍地点(A:干俣川本流,B:干俣川に流入する湧水河川,C:干俣川の支流に流入する湧水河川,D:湧水河川Cが流入する干俣川の支流,E:湧水河川Cから分岐し別流域の河川Aと湧水河川Bに流入する水路)にて除去法により生息魚類を採捕した.
河川Aの水路E流入地点直上ではブラウントラウトはほぼ採捕されなかった.一方,河川Aのうち水路Eと湧水河川B流入地点より下流側,および湧水河川Bではブラウントラウトが採捕された.河川Aと湧水河川Bとは別流域である,湧水河川Cの水源付近以外と水路Eはブラウントラウトが優占し,他の魚類はごく少数のイワナが採捕された.湧水河川Cの水源付近ではニジマスが優占し,当歳魚はニジマスのみが採捕された.河川Dではブラウントラウトは採捕されなかった.
当歳魚を含むブラウントラウトは湧水河川Cに侵入・繁殖してイワナを完全に置換後,水路E経由で河川Aと湧水河川Bに移動分散してイワナとヤマメを置換している途中であることが示唆された.小河川のブラウントラウト駆除は,繁殖地点を見つけつつ,そこから下流に向かって実施していくことが有効であると考えられた.