| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-150 (Poster presentation)
北米原産のカダヤシGambusia affinisは世界各地に導入されているが,他魚種を攻撃して鰭を傷つけ生存に悪影響を及ぼすことが知られる.一方,カダヤシが他魚種を攻撃する要因は明確でなく,どのような特徴を持つ魚種および個体を攻撃対象にするのかは不明である.そこで本研究では,カダヤシの攻撃要因を解明することを目的に,日本に生息する淡水魚を対象とした水槽実験をおこなった.
カダヤシの攻撃要因には,体サイズの近似,他個体の動き,生息層の重複が関係するという仮説のもと,それぞれを検証する実験Ⅰ,Ⅱ,Ⅲをおこなった.なお,各実験で用いたカダヤシの標準体長(以下,SL)は21-25 mmであった.実験Ⅰでは,カワムツ,タモロコ,フナ類,タイリクバラタナゴを供試魚として用い,サイズはS(SL 16-20 mm),M(SL 26-30 mm),L(SL 36-40 mm),LL(SL 46-50 mm)に分けた.いずれかのサイズの供試魚1種とカダヤシを1個体ずつ水槽に収容し,カダヤシの攻撃回数を記録する実験を繰り返した.実験Ⅱでは,ドジョウ(SL 33 mm)とカダヤシを1個体ずつ水槽に収容し,ドジョウが動いているときと静止しているときに対するカダヤシの接近・攻撃回数を記録した.実験Ⅲでは,底生魚であるカマツカ(SL 25-33 mm)とカダヤシを1個体ずつ水槽に収容し,水深20 cmの条件と生息層を重複させた水深2 cmの条件間でカダヤシの攻撃回数を記録した.
実験Ⅰでは,カダヤシの攻撃回数は,すべての供試魚種に対してS~LよりもLLで特に少ない結果となり,同サイズで比較すると供試魚種間で有意差はなかった.よって,カダヤシは体サイズが小さい個体に攻撃性をよく示すと考えられた.実験Ⅱでは,カダヤシは動くドジョウにのみ接近・攻撃した.よって,カダヤシは他個体の動きに反応して攻撃すると考えられた.実験Ⅲでは,カダヤシはいずれの水深でもほとんど攻撃しなかった.よって,生息層の重複は攻撃要因と関係ないことが示唆された.