| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-151 (Poster presentation)
管理放棄されたモウソウチク林は周囲に拡大し、侵入先の植生を竹林に変化させるため、地域の生物多様性を減少させている。そのため保全地域をモウソウチクから守るためには、侵入したモウソウチクを適宜伐採することが必要となる。しかし管理資源が限られている場合は、管理資源を管理効果が高い地域に割り振ることが重要となる。従ってモウソウチクの将来分布を予測するモデルは、管理計画を策定する段階において管理効果が高い地域の判別や管理シナリオの比較を可能にする点で有用である。先行研究でも、空撮画像で観察されたモウソウチク林データを用いることでモウソウチクの将来分布を予測してきた。一方、モウソウチクの悍高は樹冠よりも低くなりうることから、空撮画像からは観察できない竹林の存在が想定される。この見落とされた竹林の存在は既存手法が将来分布を過小評価する原因になると考えられる。そこで本研究では竹林分布を推測するモデルとして、観察された分布に偽陰性を加味する手法を提案検証した。本研究では状態空間モデルを用いることで観察された分布と真の分布を別々に考え、空撮画像上で林冠に隠れた竹林を想定した。実験では既存手法と提案手法をそれぞれ、落葉樹よりも低い悍高を持つモウソウチクが分布する地域において、2021年までの空撮画像を用いて学習した。学習されたモデルを用いて2023年度の竹林分布を予測したところ、提案モデルの方が精度及び感度が約10%高いことが確認された。また提案手法は潜在状態を考慮することで、空撮画像上では落葉樹に隠れていた林縁からの拡大部を適切に推測できた。本研究の提案手法は既存手法よりも林分の詳細な林縁形状を予測可能なことが示唆されたことから、提案手法は保全地域と放棄モウソウチク林の境界を対象としたミクロな管理計画を作成するうえで有用だと考えられる。