| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-155  (Poster presentation)

小笠原諸島の外来種グリーンアノールの睡眠時の止まり木の特徴【A】【O】
Sleeping site of invasive Green anoles in Ogasawara islands 【A】【O】

*猪森恒一朗, 酒井理, 岩井紀子(東京農工大学)
*Koichiro INOMORI, Osamu SAKAI, Noriko IWAI(TUAT)

外来捕食者は時に在来種の大量絶滅を引き起こし、その防除は世界的な課題である。日本の小笠原諸島では、外来捕食者であるグリーンアノールが在来昆虫相を壊滅させており、防除が喫緊の課題となっている。本種は昼行性であるため日中の活動に関する知見は豊富であるが、夜間の空間利用に関する情報は不足している。本研究では、グリーンアノールの夜間の微環境利用の把握を目的とした調査を行った。小笠原諸島父島と母島において夜間ルートセンサスを行い、本種が夜間に発見される高さと植物種、体サイズおよび性別を記録した。捕獲成功率は93.3%、捕獲効率は20.3個体/hと、日中に期待されるそれよりも倍以上高かった。発見した高さは既存研究による昼間の結果よりも高く、オスで253.4±113.1 cm(平均±SD、N=58)、メスで257.2±123.4cm(N=72)、幼体で95.8±55.3 cm(N=86)であった。全ての個体が葉上で確認され、夜間は地上からの捕食者を回避するために高い位置にある葉を利用していると考えられた。成体の雌雄間では発見高に有意な相違は認められなかったが、幼体は成体よりも有意に低い位置で発見された。これは、幼体が成体による捕食を回避している可能性が考えられた。植物種について算出したピアンカのオーバーラップ指数による重複度は、オス-幼体で0.29、メス-幼体で0.36と低かった一方で、雌雄間では0.75と高かった。成体ではヤシ類を、幼体ではギンネムやワラビの利用が多く見られ、これらの種に共通する羽状複葉の葉を好む可能性が示唆された。アノールの体重によって発見高が異なるか検証したところ、メスのみで正の相関がみられた。夜間はオスのなわばりは解除されるが、メスでは妊卵個体がより地上からの捕食者を回避したのではないかと考えられた。本種の捕獲を念頭にする場合、夜間に、対象とするライフステージに合わせた植物種および高さを探索することが効率的であると言える。


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