| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-156 (Poster presentation)
アフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)は、軟体動物門腹足綱に属する陸産貝類であり、東アフリカを原産とする。アフリカマイマイは農業および生態系に甚大な被害をもたらすことが知られており、農作物の食害や寄生虫を媒介することによる健康リスクを引き起こす。アフリカマイマイを駆除するうえで、他生物への影響は最小限に抑え、限られた労力で最大限の効果を得るためには、 「重点的に駆除すべきエリア」を明確にする必要がある。本研究では、小笠原諸島の父島を対象に生息適地モデルを作成し、駆除労力を効率的に集中させる場所を予測することを目的とした。現在、父島において個体数が減少しているため、データの偏りを避けるために父島だけではなく母島、台湾においても野外調査でアフリカマイマイの個体数を調査し、そのデータを基に MaxEntを用いて生息適地モデルを作成した。その後、小笠原支庁において2 年おきに父島で実施されているモニタリングデータを用いて 3 種のモデルの正確性を検証したところ、母島モデルは父島での分布を最も正確に予測し、駆除活動の労力を集中すべき場所を特定するうえで有用な指標となる可能性が示唆された。さらに、母島モデルから、現在はモニタリングされていないが水上機発着所周辺、小笠原ビジターセンター周辺、小笠原村診療所周辺、東京都小笠原支庁周辺、小笠原村立父島保育園周辺、地域福祉センター周辺、および屏風谷付近の湾岸道周辺が高い生息可能性を有することが明らかになった。これらの地域では、アフリカマイマイが定着すると繁殖が爆発的に進む恐れがあるため、重点的なモニタリングと駆除活動が求められる。これにより、父島でのアフリカマイマイ根絶への進展が期待されるだけでなくある地域のデータが偏っている場合でも、他地域で作成したモデルを活用することで、より精度の高い予測や効果的な対策を導き出すことが可能であることを示すことができた。