| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-158  (Poster presentation)

野外観察および室内実験からみたカダヤシの水温・光条件に応じた行動変化【A】【O】
The behavior change of mosquitofish related to water temperature and light conditions observed in field and laboratory survey【A】【O】

*兼平翔矢, 奥田理紗, 北川忠生(近畿大学大学院)
*Shoya KANEHIRA, Risa OKUDA, Tadao KITAGAWA(Kindai Univ.)

北米原産の小型魚類であるカダヤシGambusia affinisは、感染病を媒介するカの幼生を捕食する特性から世界各国に導入され、日本にも広範囲に拡散し定着している。在来種への攻撃・捕食等の被害と、高い繁殖能力から特定外来生物に指定されたが、本種についての生態を含めた知見は乏しく、具体的な対策もあまりとられていない。本研究では、本種の駆除に有効な基礎的生態を明らかにするために、野外調査および室内実験を実施した。野外調査では、柵や建築物がほとんどなく外周を全て観察できる奈良県奈良市の猿沢池にてラインセンサス調査を実施し、本種の周年での出現地点および個体数を計測した。その結果、夏から秋には日陰でカダヤシが見られたが、冬には水温の低下に伴い出現場所が日向に集中し、水温10℃以下で見られなくなった。また、一年を通し日向で、流入口や構造物、浮遊物等がある地点で記録個体数が極めて高かった。野外調査の結果に基づき、室内実験により本種の光に対する誘因性、水温と光が動態変化に及ぼす影響を検証した。光に対する誘因性について、光が直接当たる明所と上部が覆われた暗所の2区画を設けたタライでカダヤシの動態を観察した結果、明所を好む傾向が認められたが、その分布は明暗の境界付近に集中した。また、実験時に人の接近が暗所への忌避を促している様子が観察され、特に成熟したメスが顕著であった。野外調査では水温の低下とともに記録個体数が減少したが、水槽での飼育観察において水温変化に伴うカダヤシの遊泳水深を撮影した結果、水温がおよぼす影響は確認できなかった。一方で、水温変化および光の有無に応じた動態変化を観察した結果、活動率が水温10℃のときに低下し、照明を点灯した朝から昼に上昇した。本研究より、カダヤシの動態が水温と光に応じ変化し、駆除に有効な活動時間帯や外部刺激からの忌避行動などの知見が得られた。


日本生態学会