| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-159 (Poster presentation)
朝鮮半島原産の肉食性淡水魚であるコウライオヤニラミ (Coreoperca herzi) は、2017年に宮崎県の大淀川水系への侵入・定着が確認され、在来生物への捕食等による強い侵略性が報告されている。現在、本種の生息は大淀川水系に限られているが、観賞魚やゲームフィッシングの対象として人気が高く、ネットショップ等で容易に入手可能であるため、放流による他水系への新たな侵入・定着が懸念される。本種の生息適地ポテンシャルが高い地域は、侵入個体が生存しやすい環境、つまり定着リスクの高い地域だと考えられ、防除のための監視や駆除の優先順位決定において重要な情報となる。本研究では、在来分布域である韓国における生息情報をもとに種分布モデルを構築し日本国内に適用することで、本種の定着リスクを可視化することを目的とした。2010~2024年に韓国で記録された本種の在データをGBIFから取得し、気温や水文などの環境データをWorldClimやHydroATLASなどのデータベースから収集した。水域を含むセルに分析対象を限定して環境データを抽出し、種分布モデリングを実施した。モデルのアルゴリズムには、在データのみの種分布モデリングにおいて高い推定精度が報告されているMaxentおよびRandom Forestを採用し、アンサンブル学習を行った。構築したモデルの変数重要度を調べた結果、特に標高や河川流量が大きく寄与していた。モデルを日本に投影して予測を行った結果、日本国内の広範囲に本種の定着リスクの高い地域が存在することが示され、特に山間部の河川でリスクが高い傾向がみられた。この傾向は在来分布域である韓国ともよく一致しており、構築したモデルは日本における定着リスクを適切に評価できていることが示唆された。これらの水域に対して優先的な監視を行うことで、本種の効果的な防除に繋がることが期待される。