| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-161 (Poster presentation)
真社会性のアリ類は,高度な社会性と高い環境適応能力により多様な地域に侵入・定着し,様々な作用をもたらす.そのため,有害生物として認識され,防除・駆除対象とされる機会も多い.近年のアリ防除では,遅効性の殺虫成分を含有した毒餌を用いた手法が主流になりつつあるが,防除が困難なアリ種も存在するため,より効率的な防除方法の開発が求められる.一方で, アリ類は時期によって幼虫(B)の個体数が異なり,それに伴って餌の質(糖・タンパク)の選択性が変化するとされる.これは,時期に応じて餌の質を変えることで防除効率が高まる可能性を示唆している.しかし,先行研究は餌の形状(液状・固形)が異なっており,そのため選択性が変化した可能性も否定はできない.そこで,アリ類の生活史に合わせた防除手法の提案を目指し,防除困難種とされるアルゼンチンアリを対象に,餌の特徴(質・形状)に応じた本種の採餌行動を評価した.多幼虫コロニー(働きアリ(W)=20,女王(Q)=1,B=20),少幼虫コロニー(W=20,Q=1,B=10),無幼虫コロニー(W=20,Q=1,B=0)の3つのコロニー条件を設定し,試験用の巣箱に導入した.巣箱の中央に質と形状を組み合わせた4種類の餌を設置し,本種による餌の選択行動を60分間観察した.次に,実際の防除現場で使用される殺虫剤(フィプロニル:50 ppm濃度)を各餌に含有させ(毒餌),巣箱に設置したのち48時間経過時の死亡率を測定して防除効果を算出した.試験の結果,全てのコロニーが糖質の餌を選択し,タンパク餌に対する選択性はほぼなかった.また,形状については,無幼虫コロニーでは液状を,多幼虫コロニーでは固形を選択していた.防除効果に関し,無幼虫コロニーでは餌による差はなかったが,多幼虫コロニーでは糖/固形餌が有効であった.このことから,幼虫のいない時期には糖/液状餌を,多幼虫の時期には糖/固形餌がそれぞれ有効である可能性が示唆された.